HAUNTED-666
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真・女神転生 IMAGINEのプレイ日記などw
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あえて無題
えと、変なよみものなので
ぱっと見、興味なかったらスルーでw
最初に時代設定は戦国です。
「男」と「彼」の二人の話です。

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「躑躅の枯れ行く様は、甘美な死のようだな。」

鮮やかな色彩を残して、甘い香りを放ち朽ちていく。

「悪くない。」

そう言って男は赤い杯に注がれた濁り酒を呷った。
鼻の奥で酒の香りと躑躅の匂いが混ざり、一層酒を甘いものにする。

今宵は満月、庭は月明かりに照らし出され、
月の欠片のような白い石を敷き詰めた道が1本斜めに奥へと続いている。
その両脇を転々と配された躑躅が花としての『甘美なる死』を迎えていた。
が、そのすぐ近くでは次の『花としての生』が綻び始めている。
輪廻を思わせるこの庭の花の移り変わりは隙が無い。
良い庭師を雇ったものだと感心する。
夜風はまだ冷たく、酒で火照りだした身体には丁度良い塩梅だ。

「『甘美な死』など有りはしない。あるのは唯、無のみだ。」

隣で静かに呑んでいた男がため息混じりに口を開く。
ここ数日の事を思っていたのか少し俯き気味の姿勢で庭の躑躅を見ていた。
その横顔はいつものように凛としていたが、何処か哀しげだった。

「哀しい事言うねぇ…」

フンと鼻で笑い懐に隠していた小刀を取り出す。
黒漆で描かれた見覚えのある家紋が赤い鞘の中央にある以外他には何の装飾も無い小刀。
それを彼の目の前に翳した。
途端目の色を変えた彼に胸倉を掴まれ床に叩きつけられる。
白い濁り酒が飛び散り、手に持っていた赤い杯がカランと音を立てて板の間に落ちた。

「お前!これを何処で?!」

相当強く叩きつけられたが、先ほどから飲んでいた酒が
痛みを幾分か緩和してくれたようで思いの外痛くは無かった。
胸倉を掴む彼の手が震えている。


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彼の友人が死んだ。それを伝えたのはこの男だった。
この小刀はその友人のものだった。
男はこの小刀を渡せずにいた。否、渡せなかった。


勝利の歓喜の中、訃報を伝えられた彼は直ぐに

「独りにしてくれ」

と本陣を抜け出した。
その様にするつもりだったが、形見となる小刀を渡し忘れていた事に気が付き、
直ぐに彼を探しに本陣を出た。
彼は割と近くにいた。が、男は其処から動けなかった。
大木の幹を何度も殴りつけるその姿は戦場を駆ける時の彼からは想像も出来ない。
自分自身への憎しみが暴走している姿。
拳から血が滲み、流れ出してもやめる気配は無かった。
彼の一番弱い部分が曝け出されていた。
その瞳は悲しみで深く彩らていたものの、涙はなく、
ただその悲しみを隠すような自分への憎悪の光が鋭く突き刺すようだった。
今は駄目だ。そう思った。
時間が必要だと。


ゆっくりと彼に答える。

「彼の死を、見届けた時に。」

「何故、今まで隠していた。」

間髪いれずに聞き返す彼の声には段々怒気が含まれてきている。
男の胸倉を掴む手に更に力が込まれていく。
彼の鋭い憎しみの光は時が経つにつれ鈍く光る後悔の念に取って代わり、
未だ深い悲しみが住んでいる。その色は益々濃くなるばかりだ。
押し倒された状態のまま再度小刀を彼に差し出す。

「もう、いいんじゃないか?」

「何がだ?意味が分からん。」

更に強く圧迫された胸に息が詰まる。
今度はそのまま斬られそうなくらいの迫力を帯びた声で問い詰める。

「貴様、俺の質問に答えろ。」

「・・・外に押し流せ。溜め込むなよ。」

「・・・・・・何が言いたい。」

一瞬揺らいだ彼の瞳は、意志の強さを滲ませる男の顔を見据える。

「・・・泣いちまえよ。」

途端核心を衝かれた彼は息が詰まったような表情を見せた後、
男の胸を突き飛ばし、小刀を奪い取るようにして男と距離をとり、
そのまま月明かりの庭に裸足で飛び出した。
いきなり加えられた胸への圧力にむせながら身体を起こす。
男が辺りを見回した時には既に彼の姿は無かった。

「まったく素直じゃないねぇ。」

苦笑いを浮かべ、いつもの事か、と一人ごちる。
居直って先ほど落とした赤い盃を懐から出した手ぬぐいで軽く拭き、
またにごり酒を注ぐ。今度は少し酒が苦く感じた。


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あれから何刻過ぎただろうか、
南中し更に輝きを増した月は金の色から白銀へと変化していた。
まだ飲んでいた男の横に影が落ちる。
下向きに直ぐ横を見ると汚れた素足が目に入った。

「・・・さっきはすまなかった。」

「いいって。」

戻ってきた彼に酒を傾けたが片手を挙げいらないと合図を送られる。
瞳が赤い。
男はつい笑顔になってしまう。
彼の手には先ほどの小刀がしっかりと握られていた。

「・・・俺にとっての『甘美な死』とは何だかわかるか?」

いきなり振られた彼はわからないと頭を横に振った。
立ったままの彼を自分の隣に座るよう促し、視線を合わせる。
まだ悲しみの色は拭いきれてはいなかったが、暗さは幾分か緩和していた。
少しは気が晴れたのだろうかと。
また男は少し笑った。

「色褪せる事の無い、大切な思いを胸に、自分の生きた証を刻み、死ねる事だ。
・・・そして悲しんでくれる大切な仲間を『残して』死ねる事。」

少し驚いたように男を見る彼の目には僅かに恥ずかしそうな男の表情が写っていた。
仲間を残して死ぬ、それはつまり自らの命を引き換えに仲間の幸せを築く。

「俺一人の命で皆が幸せになれるなら、喜んでこの命差し出そう。
あいつもそう思っているはずだ。いつまでもそんなだとあいつも喜ばん。」

「お前の口からそんな言葉聴けると思ってもみなかったよ。」

そう言って少し控えめに微笑む。
まだ僅かにぎこちないが、振り切ろうとしているのだろう。

男は持っていた杯に入っていた酒を飲み干し、その首の角度のまま空を仰ぐ。

「ほら、月が綺麗だぜ。」

「・・・ああ・・・・・・綺麗だ」

彼も空を見上げ目を細める。
白銀の月はすべての影を色濃く落とし、その存在を鮮明にする。
月の下では皆平等に照らし出され、男も彼も今は平等であった。

「ああ、酒がなくなっちまった」

空の徳利を傍に置き、ごろりと寝そべる。

「ちょうどいい、静かに月見が出来る。」

ちょっとした嫌味を効かせた受け答えはいつもの事。
その彼の言葉に男は微笑んだ。



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このお話を戦国時代が好きだったMさんにささげます。
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