HAUNTED-666
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真・女神転生 IMAGINEのプレイ日記などw
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Uncertain farewell(最終章)
木々の間を掠めて来た薫風が頬を撫でていく。
エリアン、霧の高原の村の一角に清野の家はあった。
清野とmizuhoはその玄関口の階段に二人並んで座り、
庭に植えた花期を終えた花木が、花を散らしながら風に乗り流れていく様を見ていた。

mizuhoは今日清野がどこに行ったか分かっていて心配してきてくれたのだ。
そんなmizuhoに清野はエリュシオンで購入したホームベルのワインをふるまう。
外が心地よかったので玄関先ではあるが、景色を眺めながら飲む事にした。
清野の家は坂の頂上、下に広がる他の住宅区も見渡せるとても景色のいい区画だった。

「…彼はエリュシオンの永久の牢獄に収監されるらしい」

ワインをグラスに注ぎながら清野はぽつりと言った。
芳醇な甘酸っぱい果実の香りが広がる。注いだグラスを隣に座っているmizuhoに渡すと、
彼は自分のグラスにもワインを注いだ。

「そう…」

永久の牢獄は名前通り一生外に出る事のない囚人が入る牢獄。
人間であればその生が尽きるまでそこにいる事になる。
が、パトリックはディーヴァだ。ディーヴァの命は永遠。
まさに、「永久」にそこから出る事が出来ないのである。

「彼も元々は被害者だった……どうしてあんな風になってしまったんだろう…」

始めに彼に対して拷問を行った魔族が悪いのか、
自分の身可愛さに彼への拷問を手伝った天族が悪いのか、
拷問によって捻じ曲がった精神のまま直接手を下してきた彼が悪いのか…

ワインの香りを引き立たせるために円を描くようにグラスを鼻先で揺らしそれから一口含んだ。
鼻腔に充満した香りはため息と共に吐き出される。
心地よい火照りが喉の奥から胃に向かって降りて行った。

「…彼が被害者でどんなに辛い思いをしてきたとしても、私は、彼を許さない」

mizuhoは強い眼差しで清野を見つめそう言った。
胃に降りたアルコールが染みていくように、もみぞおちあたりで火照りがじわじわと広がっていった。

「多分アジュさんもそういうはずよ」

「…そうだね。」

確かに彼が悲惨な目に合ったからと言って彼が拷問した人達がそういう目に合う道理はない。
もちろん清野自身もあそこで拷問されていたのがmizuhoやアジュマーンだったら?
下手したらあの場で激情に駆られてダガーで刺し殺していたかもしれない。

一陣の風が庭の木を揺らす。そのさざめきの中それは聞こえた。

「っ!!!」

血相を変えて立ち上がった清野は持っていたグラスを落とした。
足元に広がっていく赤いワインが血のように映る。

完治したはずの胸が痛み、動悸が激しく、顔の血の気が失せ、息苦しく、呼吸が荒くなる。
辺りを何か探すように見回す。まるで危険な”何か”が迫ってきた時のように。

「ど、どうしたの?!」

mizuhoも立ち上がってあたりを見回すが何もない。
いつもの、のどかなエリアンの住宅地。

「声がしたんだ…あいつの…」

風の中聞こえて来た、パトリックの声…

『さあ…始めようか』

脳裏にあの張り付いた冷たい微笑が浮かぶ。
彼がここにいる事などありえない。あの警備が厳重な永久の牢獄から出られるはずがない。
気が動転している最中、清野のポストにメールが届いた事を鈴が告げた。

メールを開くと送信者はユベントスだった。中身を見た清野は目を見開く。

「…パトリックが獄中で死んだそうだ」

「えっ」
――――――――――――――――――――――――――――――――
差出人:ユベントス

件名:今回の事件についての最終報告

清野、君も今回深くかかわった人間の一人だから伝えておかねばなるまい。
今日午後2時過ぎにパトリックが獄中で自殺した。
例のDOTだ。奴はあれを完成させていた。それを最後に自分に使いオードの流れに還った。
術者本人が死んだ為、あのDOTの解析は不可能だろう。
君が凄惨な思いをして捕らえた囚人を死なせるというこのような結果になってしまってすまない。
――――――――――――――――――――――――――――――――

聞こえたあの声はパトリックの亡霊なのだろうか?
薄ら寒さを感じたまま、清野は空に浮かぶそびえたつAIONの塔を眺めた。

天族、魔族がお互いの生死をかけて敵対しあい戦争するその向こう側に、
このように斯くも非道たる欲望が絶望を呼び、
計り知れない闇の深さを露見した。

そして争いが続く限りその闇も比例して増大するだろう。
パトリックのような人や、彼がそうなるべくしてなった過程を作った人々も
その闇に飲み込まれた者たちだ。

何千年も続く戦争が容易く終わるわけがない、
天族か魔族か…どちらかが塔を壊したとて、その後には龍族との戦争が待っているだろう。
龍族との交戦はその前になるかもしれないが。

この世界を守る一人のディーヴァとして選ばれ、永遠の生を授かった。
それはこの戦争が終わるまで戦い続けなければならないと言う事でもある。

そしてそこからいくつもの遺恨が生まれ、それは止まる事を知らないだろう。
その事実に軽い眩暈を覚えながら清野はメールを閉じた。
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produced by hatred devil
エリュシオンの収容施設、いつもなら人間である一般人の盗賊やレパル団などの
“ありふれた悪人”が収容される事が多いのだが、今は異質なディーヴァが収容されている。
その為警備がいつもより幾分か厳しくなっている。

清野とユベントスはその施設の一角、特別収容施設にいる。
目の前の個室にはマジックミラー越しにパトリックが拘束着を着た状態で
両脇に監察官のディーヴァが見守る中座って居た。

表情は前を見据えたまま人の良さそうな笑みを浮かべている。
あのような惨劇を行うような人物には到底見えなかった。

今回は安全を考慮し、ガラス越しでの尋問となった。

「ミラーをクリスタル仕様に。」

ユベントスの指示でミラーがただのガラスの状態になりパトリックからもこちらが見えるようになったようだ。
パトリックの表情が変わり視線が合う。元々笑みを浮かべていた表情の口角がさらにあがった。

「やあ、気分はどうだい?」

清野はあからさまに表情を曇らせた。

「今日は来てくれて有難う。ユベントスに無理を言って君に来てくれるよう頼んだんだ。
どうしても、君と話をしたくてね。他の子達だと話なんか出来ない状態だろう?」

他の子達とは被害者達のことであろう、確かに肉体的にはディーヴァであれば元通りになる。
だが、皆精神を病んでしまっているものが多く、話すらまともに出来ない状態だ。

「本当は君ともっとじっくり遊んであげたかったんだけど、途中で邪魔が入ったね。
どうだった?あの時の気分は。」

穏やかに微笑みながら聞いてくる内容ではない。
まるでお気に入りのコーヒーを勧めて飲ませた時の感想を聞く、と言った風である。
狂ってる。そう感じた。

「何故…あんな事を?」

「ほう…感情的になるかと思ったが思ったより冷静だね。」

今まで笑みにより細められていた目が本来の大きさを取り戻す。
口元は笑っていたが目は凍てついた魔界の空気のように鋭い。

「何故か?そうだな…魔族も天族も関係なくこの世の全ての人が憎い。それだけの話だよ。」

一瞬瞳の中の全ての光が失われ項垂れたかと思ったが、
すぐにまたあの張り付いた笑顔でこちらを向いた。

「なあ、どうだった?
君は同族に拷問を受けて絶望したかい?痛みに我を失ったか?
苦しかったかい?何故助けが来ないと憤慨したか?
こんな事をする俺を気持ち悪いと感じたか?
回復されてまた痛みが続いて終わらない苦しみに殺してくれと願ったかい?」

拷問されていた時の事を思いだし、もう傷も無い所が痛くなるような気がして一番深かった傷があった胸を押さえる。
心なしか呼吸もし辛くなってきて思わず深呼吸した。

清野が拷問されていた時間は大体2時間程だった。
後から時間を聞いて、感覚的に1日位経っているように感じて居た。
途中途中痛みで気絶したりしていたからであろうが、
色々な感情が渦巻いて居た事は否定出来なかった。
だが、目の前の男にそれを伝える気は毛頭なかった。

清野の意思を持った両の目が男を見据える。

それを答えと受け取ったのか、パトリックは清野が言葉を発する前に話し始めた。

「俺は、全部思ったよ。それからそこに居た奴ら全員を呪って、全員を殺して…
それを毎日毎日毎日毎日…繰り返し考えてた。」

心なしかパトリックの言葉尻が強くなった。

「28年間、ずっとな。」

「…っ」

目を見開くと同時に背筋を悪寒がはしる。
28年間ずっと…?考えられない。いや、考えたくもない。
2時間だけでもやっと耐えた程だ、ここにいた天族や魔族も大体長くて1年ほどだ。
それ以上は精神が持たずオードの流れに還る者が多かったようだ。

それをこの男は28年も…?

「だから、実行したんだ。無差別に、みんな同じだからな天族も、魔族も。
いや、天族を痛め付ける方が面白いな。同族だからと安心していたのに
その直後の絶望的な表情といったら…」

男の顔は今までで一番満ち足りているといった様な笑顔になっている。
拷問されていた自分と重ね合わせて、同じ痛みを、同じ絶望を味あわせる事によって
彼の壊れた精神はようやく現世に縫い止められているのだろう。

「最高だよ、俺の手によってすべて壊れていくんだ命のみならず魂までもな」

息を吸うように拷問を行い、笑顔で残虐な所行を語る。
それが同族であっても、だ。

『ダメだ、彼はもうきっと“普通”には戻れない。』

僕にできる事は何一つない。そして誰も彼を元の性格に戻すことは出来ないだろうと。
そして彼の旧友であるユベントスも同時にその事を確信した。

「俺の時は誰も助けには来なかった、が、君の場合は仲間が助けに来てくれたね?
健康的な肌色の可愛らしい女性と俺の顔を思いっきり殴った男性。
あの一発は効いたな…まったくうらやましい限りだよ君は。」

二人の話を出されて警戒する清野にさらに畳み掛けるようにつぶやいた

「あの二人を君の目の前で同じ目に合わせてやったら君はどんな顔をするかな?」

途端、清野は今まで誰にも見せた事も無いような憎悪のこもった目でパトリックを睨んだ。

「ふふ…良いね。俺は君が大嫌いだよ」

彼の静かな笑いは狭い部屋に籠もるように響いた。
The despondent Strider
牢獄を作ったパトリックはあの後無抵抗のままユベントスが直接拘束しエリュシオンへ送ったらしい。
パトリックとユベントスは共に勉学に励んだ旧知の仲であり、友の一人でもあった。

牢獄内は現在調査中だが相当数のディーヴァが被害にあっていた。
天も魔も関係無く。むしろ同族である天族の方が損傷が酷かった。
最初抜け出したとされる魔族のスペルウイングの女性は
清野たちが面会した後すぐ消滅し、オードの流れに還ったらしい。

彼女にかけられた強力なDOT魔法はパトリック曰く
「偶然の産物」だったようで以降何度も実験を試みたが一度も成功しなかったらしい。
その実験の為に消滅したディーヴァの数は「憶えていない」とも。

保護した魔族のディーヴァはディーヴァとしてはまだ未熟な者から、
敵種族への偵察や抹殺目的の者(熟練者)迄色々だった。
中には亀裂に迷い込んだり、趣味で花を取りに来ただけの者もいた。

天族で捕まった者は天族同士で油断していたからか、かなり有能なディーヴァも数名いた。
彼等は一様に行方不明とされてきたが…
有能であるが故に精神力が強く一番苦しむ方法で拷問されていた。
そう清野が最後に見た彼がそのうちの一人であった。

あれから連日取り調べが続いているらしいが、パトリックは疲れた様子を見せるどころか
喜々として自分がしてきた奇行を語っているらしい。
尋問官はユベントス。
パトリックが彼以外とは話をする気も無いと突っぱねたからだ。
しかし、ユベントスの方は疲れがたまって来ているようで、尋問からわかった事を毎回報告してくれるのだが
日に日に目に見えて疲弊していくのが判った。

「昔はあんな事出来るヤツじゃなかった」

あまりの友の変貌ぶりに失望しているユベントスに何と声を掛けたら良いか判らず、
彼の俯いた横顔を見つめるほか無かった。

「…清野、君に頼みがある。」

言い辛そうにつぶやいた彼は伏せていた視線を清野へと向ける。
嫌な予感がする、でも清野はユベントスから視線を反らすことはしなかった。

「今日の尋問、嫌だとは思うが君も一緒に来てくれないだろうか。
パトリックが君が来るなら全てを話すと言っているんだ…
何故面識もなかった君が来ることが条件なのか判らないが…」

当然パトリックに会いになど行きたいわけがない。
しかし…このままだと拷問された恐怖だけが後に残ってしまう気がする。
恐怖の記憶はじわじわと後から首を絞めに来る。
わかっている、既に恐怖は自分の呼吸を、心拍を荒らしに来ている。

同族なのに何故あのような凶行を?むしろ被害者の実態を見ると天族の被害者の方が
明らかに拷問の手口が残忍かつ非道なやり方なのだ。
長く苦しむよう拷問のメニューを立てているようにしか思えない。

未だ恐怖はある。しかし疑問も次々と浮かびあがるのだ。
どれを取っても不可解なものしか無く、実際のところを知りたいという好奇心が
それらを上回るのに時間は掛からなかった。

「…わかりました。行きます。」

「本当に…すまないな。」

弱々しく苦笑するユベントスに清野はなるべく表情が強ばらないように微笑んだ。

Gentle awakening
※甘いです


清涼感のある香りが鼻孔をくすぐる。
これはオーカの香り?

ー僕の好きな薫りだ。

目を覚ますとそこは見覚えのある場所だった。
エリアンにある清野の自宅である。
心配そうに覗き込んでいた女性はmizuhoだった。

「あ!アジュさん!アジュさん!清さん目覚ました!!!」

大声でアジュマーンを呼ぶmizuhoに半透明のパーテーションの向こう側で
人差し指を口の前に立て静かにするように促す。

「あっごめん!起きたばかりだものね。大丈夫?」

まだ頭の中に霞が掛かったような感覚は抜けないが、
それも次第に晴れていってるのがわかる。
体はディーヴァであればキベリスクに戻れば大体元通りだし
何よりアジュマーンが回復魔法を施してくれたのであれば問題は無いはずだ。

「ん、大丈夫。それよりもこの香り…mizuhoちゃん?」

「そそ、清さん好きだって言ってたから…起きた時その香りがしたらいいかなって…」

mizuhoの表情が曇る。あの部屋で何をされていたのか見たからに他ならないが、
あれは、拷問だ。肉を抉り、血を滴らせ、骨を削る…。
あそこに囚われていた魔族、天族が精神を崩壊させられたように空虚な表情になっていたのはそのせいであろう…
想像もしたくない…アレがずっと続くなんて。
あの苦痛はもう経験したくはない。

「…ありがとう」

ゆっくりベッドから起き上がってベッドの端に座ったまま傍らに居たmizuhoを抱き寄せる。
柔らかくて暖かい、ふわっと香ってきたのはエリュシオンで売っていたルニメのコロンだろうか。
その穏やかな感覚に少し張りつめていた神経が脱力するのを感じた。

「おちつく…」

さらに抱き寄せて密着し首筋に顔を埋める。

「ちょ?!清さん??!」

「ごめん、後もう少しだけ、このままで…」

アジュマーンはこっちに背を向けて待つ姿勢を取ってくれた。
mizuhoはそれを確認して清野の背中に手を回す。

「はいはい、少しだけだよ?」

そういう彼女は頬を少し朱く染めつつ。
子供をあやすように軽く背中を撫でた。
Bloody madman
※流血表現があります



『アァ…痛イ…トテモ苦シイヨ……何デ助ケガ来ナイ?ドウシテコイツハ俺ヲ治療スル?

苦シミガ終ワラナイ。ヤメロ触ルナ。気持チ悪イ。何故コンナ事ヲ…タスケテ!タスケテ!!

苦シイ…痛イ…!!

モウ嫌ダ…助ケ…

イヤ、コノ苦シミガ続クノナラ

イッソ

殺シテクレ!!』






目の前が真っ赤だ。
何があったんだっけ?
ああ、そうだ僕は捕まって…
あの男に…
胸を突かれた。

痛みが止まない。
当然だ、目の前の男が中途半端にヒールして
傷つけて、またヒールして。
そのループだ。

ダメだ苦しい、痛い、
こんなの続いたら…正気が保てない…

「ガボッゲホッゴホッ!」

気を失っていたようで、目を覚ますと同時に自身の血で溺れかけた。
喉にまだ血が残っていたらしくそれを思い切り吸ってしまったようだ。

「清さん!」

こんな凄惨な場所に似つかわしくない可憐な声が聞こえた。mizuhoの声だ。

後からすぐアジュマーンとユベントスが入って来た。

と、同時にアジュマーンが犯人と思わしき血濡れの男にリストレインをかけ
そのまま走り寄り顔面に拳で一撃を与えた。
地面に突っ伏した男をやってきた4班のディーヴァたちが取り押さえ、拘束する。

そこで初めてユベントスは彼の顔を見た。

「お前…パトリック…」

ユベントスが犯人の顔を見て信じられないといったような顔つきで名前を呼ぶ。

「…やあユベントス。」

そういうと、パトリックは返り血に染まった顔でにっこりと微笑んでみせた。

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